最終更新日 2005.2.17

TOOTS TALK

●トゥーツ・シールマンスのインタビューなどの言葉、トゥーツへの言葉です。斜体は僕のコメント。


「いつも音楽が頭にあるから、わがままでエゴイスト。自分にも厳しい。喝采はうれしいけどすべて信じてはいけない。ジャズ即興だから、ひらめきがない時もある。いつも学びたいと思う」
「音楽は独学。ハーモニカはおもちゃのように思われていて、僕も最初は興味本位で買った。でも、泣けるでしょう。それがいい。ほんとにいい友達なんだ」

日本経済新聞 05年2月16日
「ベルギーに生まれ、フランス文化圏で育ったのだから、プレイしていてもヨーロッパの人のアクセントがあるのは当然のことだ。君がジャズを演奏していても日本人のアクセントがおのずと出る。それはいいことだと思う。典型的な例がミッシェル・ルグランだ。彼の音楽にはセロニアス・モンクの影響が見られるが、メロディはフランス人ならではのもの。B.B.キング、チャーリー・パーカーといったアメリカ人のミュージシャンを、まるごとコピーするプレーヤーが多すぎる。自分の国のなまりがあることをおそれてはいけない。ママやパパが子供の頃に歌ってくれた。子守唄を忘れちゃいけない」
「ADLIB」2001年7月号「Toots Thielemans & Tatsuya Nishiwaki」

'01年4月の来日時の西脇辰哉さんとの対談です。FIHハーモニカコンテストの懇親会で西脇さんにこの辺の話をじかに聞きました。いい話しですね。でも裏を返すとジャズって黒人の音楽(変に差別的になっていたら、ごめんなさい)ってことだと思います。同じことをやっていても黒人の方が「ホンモノ」に聞こえるでしょう。このインタビューの前の部分で、かっこいい音楽の元祖は黒人だともあります。トゥーツは、ベルギー人ってことからも、楽器がハーモニカってことからもいわゆるジャズのメインストーリムなプレヤーではなく、そういった評価は受けずにいて、ひょっとしたらそういうのを目指した時期もあったのかもしれないが、、、でも、そんなんじゃなくただ素直に自分の音楽を、自分の歌を歌うようになって今の「世界が愛してやまないワン・アンド・オンリーのMr.ハーモニカ、トゥーツ・シールマンス」があるような気がします。無理して洒落た言葉遣いをするより、素直になまりましょう。その方が心に届くはずです。(ってそれが出来りゃ苦労しないんだけどさぁ…)

(西脇さんがキーボード奏者だという話しを受けて……)
「キーボードで素敵なスケールを見つけて、ハーモニカで練習するといいよ。なぜならジャズのインプロヴィゼーションは言葉だからね。いろんな決まり文句を覚えれば、表現の幅も広がる」
「ADLIB」2001年7月号「Toots Thielemans & Tatsuya Nishiwaki」

ジャズをどうやって勉強したらいいか?がこの文で端的に表現されています。所詮アドリブとかインプロヴィゼーションとか言ってもまったくめちゃくちゃな音の羅列は、受け入れられないはずで、たいていのプレイヤーはかつて誰かが演奏したカッコいいフレーズ(決まり文句)を反復練習しています。なかにはそんなものを練習しないでも出来ちゃう人もいますが、トゥーツはこういう練習をするタイプなのですね。

「私が使っているのはクロマチック・ハーモニカ。ホーナーが私の好みをとりいれた、私専用のモデルを作ってくれた。一穴ごとに4つの音・・・息を吹き込んだときに2種類、吸ったときに2種類・・・が出て、フルートと同じ3オクターブの音域をカバーできる。最初は趣味で吹き始めたが、いまやハーモニカが私の人生になってしまった。CからAに飛ぶような時、レガートで吹くことは不可能だ。ただし、この楽器が得手とする分野なら、他の楽器が逆立ちしてもできないような演奏ができる。そこで、ハーモニカを吹く時は自分だけのフレーズ・スタイルを編み出すことが必要になる。レガートなんて忘れることさ。その楽器に合わないことをやっても、オモチャみたいなサウンドになるのがオチだ。逆に、もしその楽器をマスターして、自分はこの楽器で何ができるか、をキッチリ把握した暁には、この上もなく頼もしい相棒に変わるものなんだ。」
「風のささやき」ライナー・ノーツ

 クロマチック・ハーモニカってサックスと同じ事をやろうとしたら、難しいというか不可能なんですけど、この楽器に合ったフレーズだけを吹くという観点で見ると、出来るフレーズが限定されて、実は簡単な楽器ではないでしょうか?サックスだったらパーカーからコルトレーンまで出来ることは限りなくあるけど、ハーモニカには出来ないもんね〜…練習するフレーズが少なくて済む。

「私がハーモニカを選んだのは、この楽器が最も人間の身体に近いからだ。つまりピアノやギターなどは当然だが、トランペット、サックスなど同じように口で吹く管楽器も、マウスピースがついたり、リードがついたりという、もう一歩、ストレートになれないところがあるが、ハーモニカは、自分の息がすぐそのまま何も通さずに音になる、つまり歌と同じ意味を持つことになる」
「Captured Alive」ライナー・ノーツ

 どの楽器の奏者も、自分の楽器が一番肉声に近いみたいに主張してる部分があるけど、音が鳴ってる分部の近さから言うと、一番はハーモニカかな?
「ジョージ・シアリングを演奏していた1954年頃、私はほとんど信じられないことをやっていた。しかし、この年になってもうあんなに速くは吹けないんだよ。今は、コルトレーンがバラードで演奏したように、長い音で、歌うように吹くようにしてるんだ。まったくコルトレーンの音っていうのは、一つの長い音で驚くべきことをやってのけて、しかもそのひとつの音が吹き終わってもしばらく空気に残っているような感じなんだ。これこそが私が今、自分のサウンドに聴いているものなんだよ」
「East Coast West Coast」ライナー・ノーツ

 私は1954年頃のトゥーツと同じ年代ですが、言うまでもなくあんなに速く吹けません。1950年代のトゥーツは聴かないように心がけています。
 コルトレーンのバラードってあんまり好きじゃなかったんですが、これを読んでCDを買いに行ったことは言うまでもありません。

「音楽は決してアタマや指先から出てくるものじゃないんいだよ。ハートの奥深くから出てくるものなんだ」
「ブラジルプロジェクトVol.2」ライナー・ノーツ

「ハーモニカという楽器の特性を考えれば、ホーンだということもできるだろうね。なんたって吹奏楽器なんだから。メロディを奏でるという点においては、ヴォーカルを念頭においてプレイしていることは確かだよ。」

「長年のあいだ、毎日練習していると、テクニック的には思いどおりできるようになってくる。ハーモニカの言葉もすらすらと話せるようになる。ただ、”太陽って何だ?”って聞かれて、10年前と今でその答えが同じだったら進歩がないよね。前に聞かれた時よりも気のきいた言葉で表現したいからね。だから、もちろんスポーツマンが柔軟体操をするみたいに、スケールなどの練習をするけど、それ以上に瞑想したり、いい音楽を聴いたりするようにしている。インスピレーションにいつも新鮮な空気を送り込むようにしているんだ。使い古しのジョークで笑ってもらうようなことは、トゥーツ・シールマンスの音楽じゃない。いつもフレッシュでいたいんだ。」

「今でも僕はジャズの大ファンだ。誰かがかっこいいことをやっているということを耳にしたら、実際にその人のライヴを聴きに行くんだ。”ヘイ、それはどうやっているんだい?”ってね。人から教えてもらうということを恥ずかしいと思ったことはないよ。それが僕の若さのヒミツだな。」


 あるベーシストから聴いた話ですけど、クィンシーかなにかの来日のとき、演奏が終わってから、日本人が演奏している店にメンバー達と遊びに来たそうです。他の人は、わいわい騒いでいたのに、トゥーツだけはその演奏を聞いていて、一人で拍手をしていたそうです。

「僕はね、「こんなアルバム作りたい」だなんて思わない性格なんだよ。そういう事は周りの人達がちゃんとやってくれる。「100万ドルあげるから、自分でジャズ・アルバムを作ってくれ」って言われてもやだなあ。それにLPじゃなくてCDになっちゃたでしょ?収録時間が長くなっちゃって困っているんだよ。オリジナルの曲は3〜4分でも、その倍くらいにアレンジし直さなきゃならないんだよ。3〜4分だって、「自分がプレイしている」っていう部分を出すために苦心してるっていうのに、もどなくなんてねぇ。だから、僕には助けが必要なんだよ。マイルスとかパーカーのようなミュージシャンとはタイプが違うんだろうね。彼らは自分の中にアイディアがあって、どんどんアルバムが作れちゃう。僕の場合、映画俳優っていうたとえが近いかな。ただ演奏するという使命が与えられ、そのシーンで最高の演技(プレイ)をすることのみ、心がけるんだ。」
jazz Life


「Between Smile And Tears ということを、音楽の表現の目標にしている。ブラジルのイバン・リンスの作り出すハーモニーのようにね」
イングジャーナル 94年12月

「僕は今この時を楽しんでいる。生きているこの素晴らしさ、その感動のメッセージが自分の音楽だ」
「その音楽を聴いて、鳥肌が立つような人たちだった。音楽は楽しむために聴くんだけれど、中にはハートをぐいっと捕まえられて涙する音楽もある。それが僕の目指す音楽だ。」

目指す音楽?もう実現してるって!

読売新聞 94年12月


「コルトレーンから特にフレーズを学んでいない。たとえば彼の早いランや幅の広い音程の飛躍などは。あれハーモニカでふけるシロモノではないからね。プツっ、プツっときれるような感じだから。コルトレーンから学んだのは、スケール、フレージング、リズムに関するところか。」
 
いまいち翻訳がよくないのか何言ってるのかわかりませんが、コルトレーンかぁ…


Q、ハープ・プレイヤーにとって、チャーリー・パーカーのフレーズやソロをトライすることは価値のあることでしょうか?
「まあ、ミディアム・テンポの曲なら。ハイ・テンポでは、まず正確なアクセントを掴めることはできないだろう。トライしても、これまた”見てくれ”云々になってしまう。うまくいくはずがないんだ。」
「どんな楽器にも限界はあるものだと。ハーモニカもその例に洩れない。それに適した奏者が現れれば、その楽器をそれなりに使いこなすことができると思う。私自身もある程度のことをなし得たと考えている。重要なのは、その楽器でよいサウンドを出しうる音楽を演奏すべきであり、それにそぐわない音楽はトライすべきでないだろうということだ。」


 一番最初に紹介した言葉と重複してますね。私は、「見てくれ」云々はトゥーツ自身の50年代の演奏だと解釈しているのですが、いかがでしょうか?1950年代と1960年代後半からでは、明らかにフレーズが違います。もっとも1950年代もすばらしいのですが…
ジャズ・ハープ・スタディー
*「ジャズ・ハープ・スタディー」はシンコー・ミュージックから出版されている、クロマチック、テンホールズのジャズ・ハーモニカ教本(CD付き)です。内容が古く、訳文がアヤシイらしいのですが、貴重な情報源ですので購入して損はありません。

ジャズを愛する皆さんへ
 私がジャズ・ステートメントを発表してから随分時が経ちました。
 最近はもっぱらゲスト・ソリストとしてクインシー・ジョーンズ、ビル・エヴァンス、ジャコ・パストリアス、エラ・フィッツジェラルドやポール・サイモン、ビリー・ジョエル等の著名なアーティスト達と共演と重ねてきました。
 しかしここ数年自分自身のやるべきことがはっきりと分かってきました。自分のグループでジャズ演奏のツアーもしてきました。色々ありましたが、もう一度原点に戻ってみたいということです。
 ジャズは素敵なレディのようなもので、人生で得たすべてを捧げなくてはならないのです。
(原文)Jazz is a tough lady ,you got to give her all you got
 コンコード・レコードの厚意とフレッド・ハーシュの協力のお陰で、このたびスタジオ入りすることができました。そして勇気をふるいおこし、何か新鮮なものを発表したいと思ったわけです。自分のハートだけを信じながら(Only trust your heart)・・・。
 私の作品が注目を集め、皆さんの耳に届くことができれば、これに勝る喜びはありません。
1988,4-5 Toots Thielemans
CD「オンリー・トラスト・ユア・ハート」に添えられているメッセージ。

 オンリー・トラスト・ユア・ハートって曲の歌詞は、恋をするときは、星とか月とかロマンチックなムードを信じないで、自分の心だけを信じなさいという感じの意味です。
「僕のプレイしてるとこ、見てごらん。泣いてることあるから…ジョー・ビジネスだってことも忘れて、ただひたすら音楽に浸ってることね、僕の感情がそういうふうに動くの。マイルス・ディビスも演奏中に聴衆に背を向けることがあるけど、目をつぶって、どこで一番良い音が出るか聴きながら演奏しててね。ここだ、と思うとそれがステージの隅っこだったり、お客さんにオシリを向けたカッコウになってる。椅子に座ってても同じことでね。こまるね。」

「ハーモニカは毎日聞きたいって思う楽器じゃないかもしれないけどね。クインシーもビリー・ジョエルも、皆泣きたくなると僕を呼ぶ。年に一度ぐらい聞きたくなるでしょ。」

「Your Precious Love」ライナー・ノーツ

ブルーゼット誕生
「ステファン・グラッペリといっしょの楽屋で、口笛を吹きながらギターのチューニングをしていたら、ふとあのフレーズが出てきてね……ステファンが振り返って、『それ、とてもいいじゃないか』と言ってくれたんだ。私はあわてて自分が今口笛で吹いていたフレーズを紙に書き取って、「ブルーエット(Bluette)」というタイトルを付けた。最初は"s"がなかったんだ」
whistleguitar
「ジョージ・シアリングとのツアーでは、車や列車で移動することが多かったけれど、私はそんなときにはいつも口笛を吹いていたんだ。ビ・バップの曲やらふと思いついたフレーズやらをね……で、あるとき、ベース・プレーヤーのアル・マッキボンから、『なんだ、楽器を弾くより口笛のほうが上手いじゃないか』って言われてね。それでふと考えたんだ」
「Blues pour flirter」ライナー・ノーツ

bluetteとはベルギーの小さな青い花という意味です。スエーデンのあるプロデューサーが「これはブルースの曲だろう、ブルーゼットにしよう」と言ったので「ブルーゼット(bluesette)」になったそうです。
「僕は良いミュージシャンの良いプレイを聴くとゾクゾクして鳥肌が立ってくる。もうたまらないって感じなんだ・・・僕にとってそんな感じをしょっちゅう与えてくれるミュージシャンの一人がトゥーツ・シールマンスさ・・・」
「スタジオで作業してるだろう!で、ふとここは“何か”が足りないと思うことがある。 そんな時、ぼくはトゥーツを呼ぶことにしてるんだ。」
クインシー・ジョーンズ
「彼の楽器への感情移入の素晴らしさにいつも感動させられる。」
ダイアン・リーブス
「シールマンスがハーモニカを手にしたのは17歳の頃で、ギターより早い。ノスタルジックでセンチメンタルな楽器ですねというと、そう僕は子供の頃からそういう人間だったよと笑った。だから、黒人たちの苦しみや楽しさを伝えるジャズに夢中になったんだと思うと言った。でも、センチメンタルといわれて、ちょっと恥ずかしくないですかと聞いてみた。西洋人は人前で涙を見せることは男らしくないと言ってはじる。ブッシュ大統領は、よく泣くということで大統領の資格がないんじゃないかとよく言われた。やはり、とてもセンチメンタルでマイナーな美しいメロディをつむぎ出す、あるジャズピアニストに以前同じような質問をしたとき、そう、僕はセンチメンタルだけど、しかし、弱々しく女々しくはないという答えが帰ってきた。シールマンスの答えはどうだったか。彼は笑ってこういった。そう僕はよく泣くよ。いつも泣いてしまうんだ。何だって泣いてしまうんだ。楽屋にあったかたわらの電話を見ながら、電話を見ても泣けてくるんだと僕を笑わせた。そして、笑いながらもシールマンスの目にうっすらと本当に涙をうかべていたのを僕は見逃さなかった。ぼくらは笑い続け、そうしてこの長いインタビューは自然に終わった。少しばかり入ったアルコールがそうさせたのかもしれない。けれど、そんな笑いながら泣き、泣きながら笑うシールマンスを見て、これこそシールマンスの音楽なのだというしかないだろうと思った。こんなまったく無防備で純粋なハートがつむぎ出す音楽を人々が愛さないわけはないと思う。」
青木和富 「For My Lady」ライナー・ノーツ
 とてもいい文章なので、ライナー・ノーツをおもいっきりそのままのせてしまいました。ほんとそのとうりだと思います。
 トゥーツの新譜が出ると、輸入版のほうが発売が早いので、それを買ってしばらくして、ライナー・ノーツに何が書いてあるんだろう?って日本版を買うのでした。

「偉大な人達だけが持っている空気があるんだよね。エルヴィンにしてもトニー(・ウィリアムス)にしても・・・・・・。ボクがいままで凄いと思った人達に共通する空気を、トゥーツも持っていたんだよ。それがハーモニカであろうが何であろうが、もう「よろしくお願いします」っていう気持ちになっちゃった。」
辛島文雄 JAZZ LIFE 99年9月号「ランコントル」発売時のインタビューより

 引用した前の部分で辛島さんはハーモニカに対して偏見のようなものがあったと答えてます。松岡直也さんもトゥーツとレコーディングの際ハーモニカ嫌いだといってます。この辺の世代の人は複音ハーモニカのイメージでハーモニカを捕らえているんでしょうね・・・今でもハーモニカというと偏見を持っている人が多いですね。で、気を使って?「ハープ」とか呼んでくれたりして・・・でも、ハープは立派な楽器があるし、僕はハーモニカという呼び方が好きです。
「トゥーツは、とても素直に自分を出して吹いているところがいい」

ビル・エバンス 70年代ヨーロッパのラジオ曲のインタビューにて
「ジャズ界でハーモニカを演奏するのは彼だけなんだ。そして僕は彼が音楽とメロディに向ける全体的な感覚が大好きなんだ」
ビル・エバンス
●トゥーツがジャコ・パストリアスについて語った言葉。
「ジャコは変わったやつだったね。79年にベルリンのフェスティバルであったんだけど、インディアンみたいなカッコウでステージを走り回って、そりゃカッコ良かったよ。その記者会見の時、ジャコはフェスティバルに出ているミュージシャンのリストを見せられて、だれと一緒に演りたいかと聞かれた。そこで彼は、「トゥーツと演りたい」と答えたんだ。・・・ある時、ジャコは僕に彼の父親の言葉というのを教えてくれた。彼の父親はフィラデルファイアのカクテル・ラウンジでドラムを叩いていた。ジャコがまだ小さかった頃、彼の父親が言ったそうだ。「もしおまえがトゥーツ・シールマンスと一緒に演ることがあったとしたら、その時こそおまえが本物のミュージシャンとプレイしたってこになるんだよ」ってね。それで僕はジャコに「今はどう思う?」って尋ねたら、ジャコはこう答えた「オヤジは正しかったぜ!」ってね。・・・ジャコは少なくとも僕に対しては、約束した事は必ず守った。でも彼の家族はずいぶん泣かされた事だと思うよ。何せ彼はあんなにクレイジーだったからね」

 83年か84年だったかな?にギル・エバンスのバンドで来日したときに、ジャコを見た事があります。ステージが始まる前に一人で出てきて、ベースを弾きまくってました。ジャズ聞きはじめでよくわからなかったのですが、今にして思うと確かにクレイジーです。

●ジャコがトゥーツについて語った言葉
「トゥーツとプレイすると、いつも自然体になれるんだ、つまり、音楽のつまらない定義から開放されるんだ<スリー・ビューズ・オブ・ア・シークレット>には彼が必要だった」
「一口に音楽って言うけど、いろんな意味があるんだよ。耳から入ってくるだけじゃない、心に響く音符というか、感情的な音符もあるんだ。トゥーツのハーモニカは、そんな魅力を持っている」
 デューク・エリントン楽団の譜面は、楽器のパート名ではなく、それぞれのプレーヤーの名前が書いてあるって話を聞いた事ありますけど、心に響く音符を譜面に起こすときは、「TooTs」と書くようにしましょう。

©fuji-h

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